名画の言い分vs五感で恋する名画鑑賞術

美術館賞に関する、まったく対照的な2冊。

まずはこちら

「はじめに」の冒頭に、「美術は見るものではなく、読むものです」とあります。

古代ギリシャ以来、「理性」がベースの西洋文明にあって、「感性」で絵を見るなんてできない、と。

現代アートなら、好みだけで見ることもできましょう。けれども18世紀以前の絵は、メッセージを伝えるもの。秘められたものを知らずして、好きも嫌いもないわなぁということです。

個別の絵を掘り下げるのではなく、「その時代のエッセンスをつかむ」ような構成になっていて、面白く読めました。もう一回、世界史も勉強したくなるくらい。

最初40ページほどはカラーで、106点もの絵や彫刻が写真で見られるのが良いです(小さいサイズではありますが)。読んで、見て、好きになった絵もありました。

 

そして、もう一冊はこれ。

前述の本とは真反対、「五感」で鑑賞しようという本です。

「人間には、その時にその人が欲しているものを美味しく感じて、感覚的に見分ける能力が備わっている」を前提に、自身の感覚で、鮮烈な実感を伴った美術鑑賞を勧めています。

なんでも、絵を記憶するには、観る(視覚)だけではダメで、そこで何かを飲食して、その味や香りとともに心に刻んでおけば、月日が経ってなお、その食べ物の匂い(嗅覚)や味(味覚)によって、絵をありありと思い出すことができるのだとか。私は(食べ物に興味がないせいか)あまりピンとこないのですが…

「実感の伴わない知識の話が嫌い」と強くおっしゃってることも加味すると、この著者はきっと「地」の星座だろうという気がしてなりません!!「空気」のサインなら、名画の時代背景やその他もろもろを知るのが好きだろうし。

と、ついつい考えちゃいますな。