著者の東畑さんは、臨床心理学の博士でカウンセリング経験を積める仕事を探していました。物語はそこから始まるのですが
驚かれされるのは、こういう専門職で普通に生活できるだけのお給料をもらえるところってほとんどないということ。
人をサポートする仕事は冷遇されすぎじゃないかしら(保育士さん、介護士さんも)。モノを作って売る経済の外にあるからなのか…かといって、この分野で儲けようとするとおかしなことになる…
そういう事も含め、現場に飛び込んだ著者が体験したあれこれが、ありありと綴られています。
セラピストの端くれとしては、人との関わりにおける「ケア」と「セラピー」という2つのアプローチ法、この説明が大変ためになりました。
たとえば「大丈夫だよ」と言ってもらえないと安心できない人に「大丈夫だよ」と言ってあげるのはケア、「大丈夫だよ」と言ってもらえないと不安なのはなぜだろう?を考えてみる方向へ促すのがセラピー。
どっちがいいという話ではなくて、配分の問題だというんですね。
たしかに、私もカラーセラピーでどっちも使っています。
選んだ色を読み解く中で、クライアントさんの無意識の扉が開くときがあります。「そうか、そういうことか」ってご自身で気づいていかれる、これはまさに「セラピー」だし、ポジティブ面をどんどんあげて動機づけるのは「ケア」的といえるでしょうか。
クライアントさんの心の蓋を開けないほうがいいようなときは、聴くこと中心の「ケア」になりますしね。「セラピー」で内面に向き合うにはタイミングも必要、いつでもいいわけじゃない。
ケアとセラピー、どっちが多くなるかは、セラピストの性質や好み、得意不得意にもよると思いますが。時と場合によって、バランス良く使っていきたいですね。
そんなことをあらためて考えさせられるような本でした。心と関わる方にはおすすめ!
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